しっぺい(ゆるキャラ図鑑No.86)
今回のゆるキャラ図鑑は、静岡県磐田市からのエントリー
しっぺい
しっぺいは2015年度ゆるキャラグランプリ11位の実力者。
この愛くるしいルックスをみれば、まあそれも納得です。イヌかネコをモチーフにしとけばかわいくなるという、ゆるキャラ黄金則に見事なまでに従っています。
「静岡だしサッカーボールにしておくか」と安易に決めず、大正解と言えるでしょう。
そんなしっぺいのチャームポイントは肉球。
これまた愛くるしい。愛くるしいというか、愛くるしい。ここまでくれば打算ずくしでいやらしい。けど、愛くるしい。肉球とは、いやらしさを補って余りあるほど愛くるしいものなのです。
とは言うものの、磐田市から住民票の他、肉球登録証明書を授与されているのは一見ほほえましいですが、冷静に考えると外国人の指紋登録みたいです。犯罪とか起こしたら、現場の肉球跡(指紋?)と照合され、一発で逮捕されそうです。
もちろんゆるキャラは犯罪など起こしませんし、しっぺいの場合は、むしろ正義の味方。悪を取り締まる側の存在なのです。
…そう。それはもう千年近くも昔の話。
延慶の年(1308年)のことでした。
当時、毎年8月の初めになると屋根に白羽の矢が立てられ、そこの家の娘は(なぜか必ず年頃の娘がいました)、生きたまま見付天神へお供えされなければなりませんでした。
要するに生贄ということでしょうか。当然のことながら、村はその時期になると、深い悲しみに包み込まれました。
それを見た偉いお坊さんがかわいそうに思い、「どれここはわたしが一つ」とムズカしい修法を行ったのです。
するとどうでしょう。妖怪たちのウワサ話が聞こえます。どうやら一連の出来事は、妖怪の仕業のようです。
さらに聞き耳を立てていると、妖怪たち曰く
「信濃の国のしっぺい太郎に知らせるな。しっぺい太郎がこわい」
まるでダチョウ倶楽部。
「しっぺい太郎にだけは知らせるな。いいか~知らせるなよ~。知らせちゃダメだぞ~。絶対知らせるなよ~」
妖怪たちの"フリ"を糸口に、お坊さんは「しっぺい太郎」が信濃(いまの長野県)の犬であることを突き止めます。
そして、しっぺい太郎により、妖怪はあえなく撃沈。その正体はヒヒだったのですが、事件は無事解決しました。
しっぺい太郎の方もその戦いがきっかけで命を落とすことになるのですが、今に至るまで奉られ、ついにはゆるキャラデビューまで果たす始末。まさに英雄です。
一方、悪者であるヒヒについて多くは語られていませんが、筆者としては「惜しいことをしたな」という気持ちです。時代が時代なら、彼もTVスターとして一世を風靡していたのかもしれません。
彼がこの平成の世に生きていれば、たけし軍団とかの一員として、「世界仰天」やら「熱湯コマーシャル」やらに出演していたかもしれぬのです。きっと日本中に明るい笑い、そしてお茶の間を凍りつかせる下ネタを提供し続けていたことでしょう。
しっぺいばかりではなく、ヒヒのゆるキャラ化も待たれるところです。
なお、完全に蛇足にはなりますが、ネットには下のような動画が落ちていました。
よくわかりませんが、しっぺいがドローンになって空を飛んでいます。
そして、これもよくわかりませんが、同じく静岡県のゆるキャラ・家康くんもドローンとなり大空を駆けています。
公式による映像なのか?
なぜ空を飛ぶ必要があったのか?
女湯でも覗き見しているのか?
様々な疑問が浮かんでは泡沫のように消えていきますが、さして興味もないので深くは調べません。興味のある方はお好きにどうぞ。
あと、これもやはり蛇足にはなりますが、「しっぺい」と打つたびに「疾病」と変換されてしまうのはどうにかしてほしいです。